転職は「エージェントに頼ればうまくいく」と思っていませんか?
しかし、登録する前に、一度、立ち止まって考えてみてください。
弁理士、特許技術者、特許事務スタッフ(パラリーガル)として特許事務所への転職を考える方にとって、転職エージェントを利用するかどうかは、転職活動の結果を大きく左右する重要な選択です。特に特許事務所には特有の事情があり、状況に応じて最適な方法を選ぶことが大切です。
実際、転職エージェントを通じて理想的な職場に出会い、転職を成功させた方も多くいます。一方で、直接応募のほうが強みをより柔軟に伝えやすいケースもあります。
本記事では、転職エージェントを「活用すべき方」と「直接応募を検討してもよい方」の特徴を整理し、それぞれのメリットと背景を詳しく解説します。ぜひ最後までお読みいただき、ご自身に合った転職活動の参考にしてください。
Table of Contents
転職エージェントを使った場合と使わない場合の違い
転職エージェントは、求職者を特許事務所や企業に「紹介」することで転職活動をサポートします。求職者は無料で利用できますが、エージェントの報酬(紹介料)は、採用が決定した際に企業が支払います。
この紹介料は、一般的に採用者の年収の約30%程度とされており、例えば年収500万円の場合、事務所は約150万円〜165万円ほどを負担することになります。
一方で、直接応募やIndeed(インディード)経由の応募では、事務所側はこの紹介料が発生しません。そのため、選考や条件調整の柔軟性が高まることがあります。
特許事務所の特有の事情
特許事務所は全国に約5,000所以上存在すると言われていますが、ほとんどは小規模であり、資金的な余裕が限られています。採用に際して数百万円単位の紹介料を負担できるのは、実際には大手事務所でも一部に限られます。
さらに、勤務地を東京などに絞ると、紹介料を負担できる事務所はさらに少なくなります。これにより、優良な準大手・中堅事務所の選択肢が狭まってしまう可能性があるのです。また、エージェントを使わない大手事務所の選択肢もなくなってしまいます。
この仕組みは、特に幹部候補や経験豊富な人材が大手事務所に入所する際には有効ですが、すべての求職者にとって必ずしも最適とは限りません。
保護期間の落とし穴
意外に見落とされがちですが、転職エージェントに登録すると「保護期間」という制約が発生します。保護期間とは、特許事務所が、転職エージェントを通じて知った候補者を、一定期間、直接採用することができないルールのことです。通常、この保護期間は 6か月から1年程度に設定されています。
市場価値が高い求職者の場合は、保護期間という縛りがあってもエージェントを活用して効率的に転職活動を進められるケースもあります。一方で、そうでない場合は、保護期間が足かせになって、後々の転職活動がうまく進まない場合もあります。
なお、Indeedのような広告型の転職サイトに登録しても、保護期間はありません。基本的に広告型の転職サイトからの応募は、直接応募として扱われるからです。紹介型と広告型の違いは、「知財転職サービスってどうなの?」をご覧ください。
選考の背景 — 紹介料の影響
選考の際には、応募者のスキルや適性が最も重視されますが、紹介料の有無が条件調整に影響する場合もあります。
例えば、Aさんが転職エージェント経由で応募し、同じレベルのスキルを持つBさんが直接応募した場合、条件面で柔軟に対応できるBさんが選ばれることもあります。さらに、Aさんの方がスキル面でやや優れていても、紹介料などの総合的な事情を踏まえた判断が行われるケースがあるのです。
転職エージェントを活用すべき人
以下の条件に当てはまる方は、転職エージェントの活用を検討してもよいかもしれません。
1.40歳前後までの方
将来の中核メンバーとして長期的な活躍が期待されます。なお、よほどの実力者であれば、40代後半でもエージェント経由で採用に至るケースがあります。
2.経歴がクリーンな方
ブランク(空白期間)がなく、転職回数が少なく、一つの職場で着実にキャリアを築いてきた方は、高く評価されやすいです。
3.即戦力となる実務経験をお持ちの方
入所後すぐに成果が期待できる方は、紹介料に見合う価値があると判断されます。
4.弁理士資格(実務者の方)
実務経験がある弁理士資格保有者は特に高く評価されます。特許事務員(パラリーガル)の方は資格要件はありません。
これら「年齢」「クリーンな経歴」「実務経験」「弁理士資格」の4点は非常に重要な要素です。実際には、これらのうち1つでも大きく欠けると、事務所側が高額な紹介料を払ってまで採用しようと判断する可能性は低くなります。そのため、これらの条件をすべて一定のレベルで満たす方こそエージェント活用を検討していただき、それ以外の方は直接応募のほうがチャンスが高まります。
補強的な条件としては以下の条件があります。
- 高学歴であること
- 顧客対応力があること
- 部下への指導力があること
- 英語力・語学力があること
- 人間性を含めた柔軟な対応力・適応力があること
不採用になった方へ — 再チャレンジの視点
過去に転職エージェント経由で応募して不採用となった方は、前述の条件に一部該当しなかった可能性があります。
選考では、応募者の能力だけでなく、紹介料に伴う事務所側のリスクや負担も総合的に考慮されるため、全員一致で採用が決定するほどの強い魅力が求められる場合があります。
エージェント経由で不採用となっても、それはあなたの能力不足を意味するものではありません。むしろ、実は、紹介料を含む条件面など外的要因が大きく影響したケースがほとんどです。どうか前向きに、次の可能性を見据えてください。
「なぜ不採用だったのか」と悩まれている方は、直接応募という選択肢を再検討してみるのも一つの方法です。
まとめ
転職活動は一人ひとりの状況に合わせて最適な方法を選ぶことが重要です。転職エージェントの活用にも大きなメリットがある一方、直接応募には柔軟さという別の利点があります。ぜひ、ご自身のキャリアプランに合った形で、最適な一歩を踏み出していただければ幸いです。