転職エージェント経由の場合と企業に直接に応募する場合、多くの人が「直接応募の方が採用されやすい」と感じることがあります。その理由は、転職エージェントを介すると紹介料が発生するため、企業は費用のかからない直接応募者を選ぶ傾向があるからといわれています。
特に、弁理士、特許技術者、特許事務員(パラリーガル)が特許事務所(弁理士事務所)に転職をする場合、特許事務所はたとえ大手であっても、大企業ほどの規模ではないため、採用コストは限られています。直接応募の場合、採用する特許事務所は紹介料を支払う必要がないため、採用のハードルが下がる可能性があります。
しかしながら、特許事務所の数が多すぎて、直接応募ではどこに応募してよいかわかりにくいです。
例えば、求人広告を先にみつけ、そこから絞り込むことも可能ですが、インターネットには弁理士の求人広告が無数に溢れています。ある特許事務所は求人媒体Aに求人広告を出し、別の特許事務所は求人媒体Bに求人広告を出し、この求人媒体が多数あるためです。また、求人媒体は一度求人を出すと、それが削除されず残っていたりすることも多いです。ですので、求人が終わっているのに求人広告が表示されてしまうということも起こります。
このような状況で、求人広告から探していったのでは、砂の中から砂金を探すようなことになってしまい、本当にご自身にフィットする特許事務所に行き当たらないかもしません。
例えば、以下のような観点から特許事務所を探すこともできます。
目次
駅名から探す
特許事務所の所在地、すなわち駅名から絞り込むことができます。ありきたりかもしれませんが、行きやすいというのは重要です。具体的な駅名と、弁理士、特許事務所、とを掛け合わせて検索すると事務所がいくつか出てくると思います。テレワークが広く普及したとはいえ、週のうち何日か出社を奨励している特許事務所も多いです。また、転職した直後は、環境に慣れるために積極的に出社することもあるかもしませんし、対面の打合せが必要なときも出社しなければなりません。ですので、自宅から通いやすいか、乗り換えは何回まで許容できるか、などを考えると、特許事務所の所在地からある程度絞り込むことができます。
規模から探す
インターネットで、特許事務所、ランキング、というキーワードを掛け合わせて検索しますと、特許事務所のランキングを提示しているウェブサイトを見ることができます。ランキングは、特許出願の件数に基づくもの、弁理士の数に基づくもの、さまざまですが、一定の規模のある特許事務所を絞り込むことができます。公開公報の件数は、その事務所の最新の規模を表している数字ですので、参考になるかと思います。また、ランキングに基づきあたりを付けた事務所のウェブサイトを調べれば、所属する弁理士の数を調べることができます。「駅名」と「規模」の2つがあれば、数か所ぐらいまですぐに絞り込めると思います。
ただし、事務所の規模は大きければ大きいほどいいかというと、人によってそうでもない場合もあります。大規模事務所だと業務が細分化されていて、狭い範囲の業務を繰り返し遂行することが求められたりもします。狭い範囲の業務に集中したい人にはぴったりでしょう。一方、いろいろな業務や顧客にチャレンジして自分に合った業務をこれから見つけていきたい人は、それに応じた規模感を選ぶといいでしょう。
技術分野から探す
技術分野から調べることができます。特許庁のJ-platpat(特許や商標の検索データベース)をみると、その特許事務所が得意としている技術分野(電気、機械、化学、バイオ)や法域(特許、意匠、商標)を調べることができます。例えば、特許の検索ボックスに、代理人の欄に弁理士の名前を入れて検索すると、その弁理士が代理した特許出願の公開公報の発明の名称の一覧を見ることができます。この一覧をみれば、その特許事務所が主に、特許をやっている場合は、どの技術分野を主に扱っているかを知ることができます。
SNSから探す
特許事務所によってはSNS(FacebookやLINKEDIN)で情報を積極的に発信しているところがあります。SNSをみればその事務所の社風を把握することができますし、SNSを活用しているということはその特許事務所が常にアクティブであることを意味しています。また、特許事務所によっては、SNSに連動してリクルート(人材採用)のための特別ウェブサイトを作っているところもあります。このようなウェブサイトはリクルート専用ですので、所内の雰囲気や社風を伝えようとたくさんの情報を提供していると思います。これは採用側のPRだけではなくて、応募者に所内のことをよく知ってもらい、採用後に「思っていたのと違った」というミスマッチを防ぐことが目的です。
国内・外内から探す
特許庁のJ-platpatをみると、特許に関して、公開日から探せる公報(公開公報)が多ければその特許事務所が国内顧客を主に取り扱っていることがわかり、公表日から探せる公報(公表公報)が多ければその特許事務所が外国顧客を主に扱っていることがわかります。英語力を生かしたいと考えている人であれば、公開公報ではなく、公表公報の多い事務所、すなわち外国顧客が多い事務所に入ったほうがいいでしょう。このように国内の仕事か外内の仕事かという観点から、特許事務所を絞り込むこともできます。
最後に求人広告を直接みる
特許事務所自身が運営しているサイトに掲載されている求人は、信頼性が高いです。ランキング、所在地、技術分野、SNS、職種から絞り込めば、対象となる事務所の数は限られてくると思います。特許事務所を絞り込めたら、その特許事務所のウェブサイトに直接アクセスして、求人広告(募集要項)を見てみましょう。