20歳代・30歳代の方へ

20歳代、30歳代の方々は、知的財産の専門家としてのキャリアのスタートの時期であると思います。将来の展望を見据えて、しっかりとしたキャリア設計をしたいものです。そんな方々が新たな特許事務所に転職するとき、検討すべき事項をまとめてみました。

未経験でチャンレンジできる

20歳代と30歳代の方々にとって、未経験からのチャレンジができるというのが、大きなアドバンテージです。特に知的財産の専門家としてのキャリアに興味を持った場合、この年代であれば、柔軟性や学習意欲が高く、新しいことに挑戦するエネルギーもあります。実務経験がないからこそ、新しい視点やアイデアを持ち込むことができるかもしれません。

まず、知的財産分野についての調査や学習を通じて、自分がこの仕事に向いていると感じるかどうかを確認しましょう。また、特許事務所の求人情報をチェックする際には、自分のキャリア目標や成長に合ったポジションを選ぶことがポイントです。未経験からのチャレンジはリスクも伴いますが、その分成長や新たな可能性を見出すことができるかもしれません。自分の能力やポテンシャルを信じて、積極的にチャンスに飛び込むこともあっていいと思います。

特許なら理系が有利

理系の専攻を持つことは、特許分野でのキャリアを築く上で非常に有利な要素です。その理由はいくつかあります。まず第一に、理工系の大学で学んだ学生は、科学や技術に関する知識を深めてきたはずです。このような専門知識は、特許の分野では極めて重要であり、権利化の過程で、特許明細書の作成や拒絶理由通知に対する対応に非常に役に立つはずです。それだけではなく、権利化の後においても、その専門知識は特許侵害訴訟の対応やライセンス交渉などにも役立ちます。

さらに、企業での開発経験を持つ人は、製品や技術の実用化プロセスを理解しています。このような開発経験は、開発現場に起因する企業特有の問題、例えば発明者の権利などの問題について対処する際にも非常に役立ちます。実際、特許制度の目的は新規技術の保護であり、新規技術は研究開発の産物ですので、開発現場の事情に精通していれば、特許のプロフェッショナルとしてさらに力を発揮することができます。

ただし、文系出身者でも特許分野でのキャリアを築くことは可能です。文系出身者は、特許の出願書類や法律文書の作成において、優れた文章力や法律的な思考力を発揮できるかもしれませんし、後から技術を学び、理系出身者と同等に活躍することも可能です。

要するに、特許分野でのキャリアを築くためには、理系の専攻や企業での開発経験が役立つことがありますが、それ以外のバックグラウンドを持つ人々も特許の分野で活躍する機会があるということもいえます。重要なのは、自身の興味や能力を考慮して適切なキャリアパスを選択することです。

商標やパラリーガルなら文系

商標実務者やパラリーガルなら文系出身者が中心です。特許事務員、いわゆるパラリーガルを目指す方は、法律の知識や英語力が求められるため、文系の人が多くなる傾向にあるからです。パラリーガルの役割は、弁理士の仕事を、書類の作成や期限管理などの面でサポートすることです。そのため、理系の専門知識は必須ではなく、むしろ法律や英語に関する知識やスキルが重要です。また、パラリーガルは一般的に女性が多い職種でもあります。商標実務は、法律知識を必要としますので、法学系出身の方が多いです、

実務補助者としてスタートも可

若い方々が特許関連のキャリアについて考える際、補助者としてスタートする選択肢は一つの有力なオプションです。一般的には、弁理士資格を取得してから特許事務所に入ることが一般的とされていますが、実際には補助者として入り、実務を通じて経験を積みながら、将来的に弁理士試験に挑戦するという選択肢もあります。

補助者としての立場では、弁理士の補助業務を担当しますが、それでも先輩の弁理士の仕事を間近で見ながら学ぶことができます。このプロセスを通じて、実務経験や知識が着実に身についていきます。そして、弁理士試験に合格するための勉強も並行して進めることができます。近年、弁理士試験の受験者数が減少している傾向が見られます。また、社会全体での少子化の影響もあり、試験の難易度に変化が生じている可能性も考えられます。そのため、補助者としてスタートし、実務経験を積みながら弁理士試験に備えるという道筋も検討してもよいでしょう。

ポジションが空いているか

若い方々は、新しい環境への対応力やチャレンジから得られる成果に対する吸収力が高く、与えられたチャンスによって驚くほど成長することがあります。特に特許業界では、幅広い知識とスキルを身に付けるために、新しいポジションや挑戦が成長の機会となることがよくあります。しかし、特許事務所に入る際には、そもそもチャンスやポジションがなければ成長できないかもしれません。その特許事務所が自らの成長を支援し、チャンスを提供してくれるかどうかを見極めることが重要です。

例えば、特許事務所には様々な異なる専門分野・年齢・経験を持つ弁理士が在籍しています。シニアの弁理士が多い事務所では、新人や若手の弁理士が新規顧客の案件を任される機会が限られているかもしれません。一方で、新たな案件やプロジェクトを経験し、成長する機会が豊富な事務所も存在します。若い方々は、自身の能力やポテンシャルを活かせる環境を求める際に、このようなポジションが空いている事務所を探すことが重要です。

さらに、国際的な経験やスキルを身に付けたいと考える若手の弁理士にとっては、国際舞台で活躍する機会が重要です。しかし、全ての事務所が国際的なプロジェクトや出張の機会を提供しているわけではありません。そのため、国際的なキャリアを目指す若手の方々は、国際的な案件に携わる機会が豊富な事務所を選ぶことが必要です。

若い方々が成長し、キャリアを築くためには、自身の目標や志向に合ったチャンスが与えられる環境を選ぶことが大切です。ポジションが空いている事務所を選択することで、自身のスキルや経験を活かし、成長するための土台を築くことができるでしょう。

転職回数を最小限に

これは特許事務所への転職に限らず、一般的にいえることですが、転職回数が多いと不利になることがあります。すなわち、転職回数が多いということは、特許事務所が求める安定性や長期的なコミットメントを欠いていると受け取られることがあるということです。特許事務所は新しいメンバーを採用する際に、その候補者が長期的な関与と成長を提供できるかどうかを重視します。

転職回数が多い場合、雇用主はその候補者が将来的にも安定したパフォーマンスを示す可能性が低いと懸念することがあります。さらに、特許業界は特殊なスキルと専門知識を要求するため、一度採用したメンバーに対する研修や教育への投資が大きい傾向にあります。そのため、転職回数が多い場合、特許事務所はその投資が無駄になる可能性を懸念し、採用をためらうことがあります。

転職を考える際には、自己分析を行い、転職の動機や目標を明確にしましょう。転職が必要な理由や将来のキャリア目標についてよく考えることが重要です。また、過去の転職経験から学んだことや成長した点を振り返り、それを次の職場で活かせるかどうかも検討しましょう。さらに、転職先の特許事務所については、詳細なリサーチを行い、自分のキャリア目標や価値観に合致するかどうかを確認しましょう。これらの準備をすることで、転職回数を減らし、安定したキャリアを築くことができます。