2022年・コロナ禍での転職

今回は、コロナ禍での特許業界の転職について、高岡亮一CEOにお話を伺いました。

コロナ禍での知財業界の動き

インタビューアー(以下、「Q」):新型コロナウイルスの感染が始まって3年近くになりますが、コロナ禍によって特許事務所のお仕事が減っていますか?

高岡(以下、「高」):結論から言えば、仕事が増えています。コロナ禍が始まってからの経過をご説明すると、コロナ禍の1年目は、未知のウイルスということもあって、経済活動が著しく停滞したため、仕事が激減しました。しかしコロナ禍の2年目は徐々に立ち直り、3年目は、企業側で研究開発の遅れを取り戻そうとする反動もあって、仕事が急に増えてきています。

Q:特に、どのような分野のお仕事が増えていますか?

高:特に、特許についていえば、全技術分野で仕事が増えています。例えば、バイオや医薬についていえば、新型コロナウイルスに対するワクチンや治療薬の開発がトリガーとなって、コロナに限らず他の疾病に関しても研究開発が活発になりました。また、電気や機械の分野でいえば、企業が脱炭素技術に関する技術全般への開発投資額を大幅に引き上げ、例えば、電気自動車、自動運転、そしてネットワーク、それに伴うソフトウェアや電子部品、さらには化学素材や製造プロセスに至るまでの開発が激化し、結果として特許のニーズが高まっています。コロナ禍で仕事が減ると覚悟していたところ、今はその逆で人手不足になっています。

Q:コロナ禍でも、特許や知的財産の仕事は安定しているのでしょうか?

高:コロナ禍で打撃を受けた他の業種に比べたら、恵まれていると思いますし、これからのことを長い目でみればとても安定していると思います。要するに、日本は技術立国です。日本は資源もない小さな島国ですので、技術力だけで米国や中国という超大国に対抗してきたわけで、言うなれば特許や知的財産は日本という国の生命線なのです。

コロナ禍での転職のコツ

Q:コロナ禍での、特許事務所への転職で、注意しておくことはありますか?

高:応募者が集中する時期と、応募者が少ない時期の差がすごく激しいです。例えば、夏休みがある7月~9月、年末年始、年始から春にかけては応募者がとても少ないです。こういう時期に応募してもらえると、じっくり選考ができるし、ハードルも低くなりますので、双方にとってメリットが大きいと思います。応募者が集中する時期は、多数の人から一斉に連絡が届くので、どうしてもハイレベルな人同士の激戦になってしまう傾向があります。

Q:ハイレベルな競争になったときは決め手となるものは何ですか?

高:正直なところ、履歴書だけみても優劣はまったくわかりません。結局、応募と面接のタイミングで決まってしまうといってもいいと思います。応募のタイミング、面接のタイミング、こちら内定を出すタイミングなどが複雑に絡み合って、「もっと早く応募してもらえれば採用だった」と思う人が多いです。

Q:なにか具体的な事例とかありますか?

高:例えば、Aさんに内定出した直後に、Bさんから応募があった場合、泣く泣くBさんに不採用の連絡をしなければならないということです。あるいは、Bさんからの応募が先だったが、別のAさんの面接が先に行われてしまい、選考が遅れてしまったBさんに泣く泣く不採用の連絡をしなければならないこともあります。AさんとBさん2人ぐらいの話なら時期の調整もできなくもないのですが、現実問題としてこれが5人とか10人の選考が同時並行で進んでいるとすると、もう小細工もできませんので、結局、先に基準を満たした人に内定を出していくしかないのです。これは、どこかの企業で採用人事を担当した方であれば共感してもらえる話だと思います。

Q:なるほど。そういう舞台裏があるのですね。

高:なので、応募者が少ない時期はとても狙い目なのです。応募者の方からしても特許事務所をしっかり見て検討できるし、特許事務所側もしっかりその人だけをみて、他人との比較ではない形で検討でき、お互いに満足度の高い転職となることが多いです。

Q:応募者が集中する時期に応募した時、注意すべきことはありますか?

高:まず応募される方々は、2つのタイプに分かれます。事前によく調査して、ある事務所を第1希望だと決めてその事務所だけに応募される人と、複数のよさそうな事務所に応募して選考の中で希望を決めていく人の2つです。前者の方は、御社が第1希望だと強調されたほうがいいと思います。そうすれば他の応募者と競合した時でも多少でも時期を調整して、その人に先に内定を出すこともできることもあります。後者のタイプだと、内定が出るタイミングがバラバラですので、弊社では最終面接のあと、公には1週間といっていますが、実際には1~3営業日で内定を出しますので、応募者の方は事務所を横並びに比較して選ぶということは事実上できません。面接を受けるたびに、しっかり今後のシナリオ、例えばX事務所から内定が出たらそこに決める、またはよそから内定が出てなくてもX事務所は断るというようなことを勇気をもって決めていくことが大事だと思います。

特許事務所を見分ける方法

Q:複数の事務所を比較したとき、何を決め手にしたらよいでしょうか?

高:求人広告というのはどこも良いことしか書いてありません。だからすべてを真に受けるのもどうかと思います。でも自分の経験から、その事務所のことがよくわかるちょっとした方法があります。実は、応募から採用に至るまでのプロセスの進め方で、あんがいその事務所のことがよくわかるものです。対応の丁寧さ、進め方のスムーズさ・スマートさ、ITの活用度、スピード感で、事務所内の内情が見えると思っています。採用を誰かが片手間にやってるだけなのか、それとも、専属の部署がよく練られた段取りで進めているのか、そのあたりの違いが、結構はっきり出るものです。

Q:そうですね。選考がドタバタしているように感じると、その会社に入っても、社内がドタバタしているということですね。

高:そうですね。あとは、選考の過程で、応募者に対するマインドの問題も感じ取れると思います。応募者の方が送る履歴書は、たった紙1枚にすぎませんが、その人の人生や希望が凝縮された大切なものです。なので、それを送ってこられた方は、年齢や経歴に関係なく、すべて等しくリスペクトされるべきです。その事務所が応募者にどう向き合うかで、事務所が社員の方々にどう向き合っているか、顧客にどう向き合っているかがよくわかります。要するに、一事が万事だと思います。

Q:有難うございました。

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